今までの「けじめ」
これからの「出発」
という意味で大きな価値があると思います。
俺も先月そうやったから!
と、以前のメールにも書いてきてくれていたつよポン。
ほんとに、その通りだと思います。
もしつよポンが検査を勧めてくれなければ、私は相変わらず不幸をどんどん生産してしまっていたかと思うと、この時期につよポンと出会えたのはやっぱり偶然じゃないなあと。
血液検査のおデートを終えた日の夜、家に帰ってPCを開けたら、つよポンからメールが届いていました。おデートに向かう前に書いて送ってくれていたものです。
『幸せなデートを終えた未来の我々へ』と題したメールを読んで、私、泣いてしまいました。
まだ出会ったばかりで肉体関係もないのに、ものすごく大切な人になっていることに気づいたからです。
ピアスをどんな気持ちで選んでくれたかとか、私をどのように大切にしていきたいかだとか、そういうことが綴られていて、そこにつよポンの純粋さを見ると同時に、先ほどとは違って、なぜこの時期なのかとも思って悲しくなったのです。もう少し早く出会えていたらと。そんなこと思ってもしようがないんですけど。
ええ、ええ、不倫なんですよ。
別に結婚したいわけじゃないので、どうでもいいっちゃどうでもいいんですけど、
人のものを盗む罪悪感に耐えられるのかとか、
独占できないことの焦燥感はどうなのかとか、
そんなことが頭の片隅をよぎるわけです。
包丁持って不倫相手の家の玄関先に立つ才能が私にもあるということなのでしょうか?!
今までも奥さんのいる人いっぱいいましたけど、こうゆうこと、あんまり考えたことありませんでした。相手の家庭は既に壊れてるんだから特に問題はないだろう、ぐらいにしか思ってなくて。
ところがつよポンの家庭は壊れているふうではなくて、どちらかというと円満な感じです。こんな人でも浮気するのかとびっくりします。まあ、性的な満足が得られていないということらしいんですが。
それなら買いに行けばいいんですけど、病気が怖いのと、そうゆうところは「セックスの流れが自分でつかめないのがイヤ」なんだそうです(笑)。かといってナンパなどできるわけもなく、年寄り相手の開業医では出会いがまったくないため「大学同門会」の先輩に教えられた出会い系に行って私に引っかかったというわけです。本来は、病気の心配なく割り切ってセックスできる相手であれば誰でもよかった・・・・・・フシがあります。つよポンは言いませんけど(笑)。
私もね、セックスだけが目当てなら、こんなややこしいこと考えないですけどね。カタログショッピングみたいに、見栄えのする若い男やお金持ちのおじさん、エッチの上手そうな男を選んで割り切って楽しめばいいじゃないですか。
なのに、もうそうゆう気は全然おきなくて。トシ、なんでしょうか。
それでずっとお付き合いできる人がほしいなと思って、カップリングパーティに行こうと思ったのでした。幸い、まだつよポンとは深い関係になっていないのだし、今からでもパーティに行って私にふさわしい条件の人を探すべきでは? 今ならまだ引き返せるのでは? とかぐじぐじ考えていたのですが、もう、つよポンへの気持ちが止められなくなりました。
なかなか、難しいですね。このトシでいい相手に出会うなんてことは。いいものは大概人様のものだし、中年になっても余っているサラピンはやっぱりどこかオカシイですよ。×のついた素敵な人を見つけるのは至難の業なので、徳の少ない私にはつよポンがあてがわれたのでしょう。とりあえず考えをそこに落ち着けて、納得してみました。
ただね、私は所詮浮気相手、ということは忘れずにおこうと。
えっと、また話が長くなりましたね。そんなこんなで迎えた1週間後の土曜日の午後。私達はまた待ち合わせてお昼ご飯を食べました。
そこでつよポンがカバンから出してきたのは、つよポンのHIV検査結果報告書です。
「いずみちゃんにこれをちゃんと見せとかんと、なあ」
そりゃそうですね。検査結果はメールと口頭でしか聞いてなかったので。
もちろん、全部マイナスでした。
「今日はいずみちゃんもこれと同じもんもらって、それで我々は晴れてキッスできるわけやな」
ちなみに、キとスの間に小さい「ッ」を入れるのはヲッさんの証拠です(笑)。やめてほしいです。
2時前に、勝手知ったる「大阪合同ビル土曜日常設HIV抗体検査」会場へと向かい、列に並びました。この日はちょっと出遅れてしまって2階への階段の下のほうに並ぶことになりましたが、今日は検査結果を聞くだけなのでさほど時間はかからないだろうと思われました。
そんな安心感から、ここで待つ間の私達は、片方が口にくわえたハイチュウを、もう片方が相手の唇につかないようにしてくわえ取って食べるという痛い遊びをしていました。んなことはどっか他所でやれよ、ったく。
2時になり開場したところで、つよポンとはお別れ。
「ここで待ってるからな〜」
会場入口で明るく手を振るつよポン。
出てくる時には抱き合って、そして待ちに待った熱〜〜〜いキッス、いや、キスができる。そう、思ってました。
検査結果引換症を持って受付に行くと、そこに書かれたのと同じ番号の封筒をボランティアのお姉さんが箱から取り出し、それとともに小部屋へ連れて行かれました。
小部屋にいたのは市立ナントカ病院のお医者さん。小部屋にはこのお医者さんと2人きり。わくわく(違)。
再度番号を確かめるよう促され、間違いないと答えると、お医者さんが封筒を開封し、中から取り出した紙片をテーブルに置きました。さっきつよポンが見せてくれたのと同じ紙です。
「じゃ、説明していきますね。今回、全部マイナスということは・・・あッ」
お医者さんが「あッ」と言ったのと同時に、私も紙片に書かれた文字を見て声を上げていました。
プラスがある・・・・・・!
ということは陽性です。
こんな時、目の前って真っ暗にならずに真っ白になるのだと知りました。
「だ、だ、大丈夫ですか?」
お医者さんは声をかけてくれましたが、私はしばらく口が利けませんでした。なんで、なんで私が・・・・・・!
(つづく)
この時のことを思い出すと泣けてきます。


